クールな社長の溺甘プロポーズ
「柳原チーフ、来週の各店への納品数あがってきました。データ送ってあります」
「ありがとう」
私の言葉に、長身で黒いストレートヘアがよく似合う上司・柳原チーフは手もとの書類から、デスクの上のPCへ視線を向けて、物流データを確認する。
すると彼女は、思い出したように「そういえば」と口を開いた。
「昨日はどうだった?高校からの友達と女子会、って言ってたけど」
「あー、はい。楽しかったです。話も沢山したし、お店も美味しくてアタリだったし」
「いいねぇ。私地元が地方だから、同級生と都内で女子会なんて羨ましい」
柳原チーフは黒いアイラインで囲った目をPCの画面に向けたまま、拗ねたように口を尖らせる。
そう。私は地元が東京なので、友達とも今だに半年に一度くらいのペースで集まれる。
それはすごく楽しいし、いいんだけど。
「けどまぁ、今回も明らかに差を見せつけられたというか、なんというか」
「差?」
昨日の集まりでの光景を思い出すと、苦笑いになってしまう。
そんな私の表情に柳原チーフはこちらに顔を向けて、不思議そうに少し考えてから気づく。
「あ、わかった。友達はみんな結婚してたり子供がいたり、彼氏がいたりするやつだ」
うっ。
軽い口調で言われた、『友達は』のひと言がグサリと刺さる。けれど柳原チーフは容赦なく言葉を続けた。