クールな社長の溺甘プロポーズ
「なんでいるんですか!?今朝、『迎えには来ないで』って言ったじゃないですか!」
「だがそれを了承した覚えはない」
「ぐっ……!!」
た、確かに。
けどてっきり了承したものだと思い込んでいたから、今日はもう現れないとばかり思っていた。油断した。
悔しさに顔を引きつらせていると、ふと周囲の視線に気づく。
辺りを見れば、昨日同様何事かとこちらを見る人々や、中にはニヤニヤと笑ううちの社員たちがいた。
あぁ、これはまた明日『昨日も彼氏さんお迎えに来てましたね〜』と冷やかされるパターンだ。
少しでも噂にならないように、と私は早足で建物を出る。もちろん大倉さんも、それに続いて一緒に外へと出た。
けれど、今回は会社の外に車は停められていない。
「車はどうしたの?」
「会社に置いて、タクシーで来た。星乃が今朝嫌がっていたからな」
「え……?」
確かに、今朝私は『目立つから嫌だ』と言ったけど。そのために、わざわざ車を置いて来たの?
素直というか、なんというか。クールそうな見た目とは逆のその性格に驚いてしまう。
「それともやっぱり、違う車に買い換えてくるべきだったか?」
「だからそこまではいいですってば!」
ここで『そうね』なんて言ったら本当にやりかねない。
もう、本当になんなのこの人は。
スタスタと早足で歩く私に対し、彼は長い足で自然に隣に並んで歩く。