クールな社長の溺甘プロポーズ
「で?なんの用?」
冷たい口調で問う私に、彼はなんてことないふうに答える。
「食事でもどうかと思ってな。どうせ予定もないだろ」
「なんで知ってるんですか……」
「星乃にもう半年ほど彼氏がいないことも、平日は人との予定を入れず直帰なのも調査済みだ」
調査って!?
どんな手を使ったのか。知りたいけれど知りたくない気もする。
けど、一緒に食事なんて行こうものならいっそう上手く丸め込まれてしまうだけ。そう思い顔を背ける。
「あなたと食事なんて行きません。帰ってください」
「そうか。せっかく酒と食事が最高に美味い店を予約しておいたんだけどな」
酒と食事、しかも最高に美味い。その響きに反応するようにお腹が『ぐう』と音を立てる。
それは大倉さんにも聞こえていたらしく、彼はおかしそうに「ふっ」と笑った。
「正直で話が早いのは助かる。行くぞ」
そして、私の腕をそっと掴み、向かう方向へと歩き出す。
行くなんて誰も言ってないんだけど。
けど『ちょっと行ってみたいかも』と思ってしまったことは確かだ。だって最高に美味いだなんて気になってしまうに決まってる。
しっかりと手首を掴む少し冷たい指先に、彼の体温の低さを感じた。
「……大倉さんのせいで今日大変だったんですから」
渋々といった足取りで彼についていきながら、私はその顔をじろりとにらむ。