クールな社長の溺甘プロポーズ
「予約した大倉ですが」
「大倉様ですね、お待ちしておりました。奥のお部屋にどうぞ」
そして通されたのは、奥にある個室。
畳が敷かれたひっそりとした座敷席で私たちは向かい合って腰を下ろした。
「お料理はお伺いしていた通りのお任せコースでご用意しております。お飲み物はどちらになさいますか?」
「烏龍茶ひとつ。星乃は?」
「焼酎。おすすめで持ってきてください」
どんなものがあるかもわからないし、とりあえずお店にお任せすることにした。どんなお酒でも飲めてしまうし。
「かしこまりました」と部屋を後にする女性に、その場には私と大倉さんのふたりが残された。
「わざわざ予約しておいて私が本当に行かないって言ったらどうするつもりだったんですか?」
「それは考えてなかったな。澤口さんからも『意外と押しに弱いタイプ』だと聞いていたし。あと酒が好きだということも調査済みだったから、美味い酒の店ならついてくるだろうとも思った」
確かにそうですけども……!
いとも簡単に見透かされてしまう自分の性格がもはや情けなくて、私はがっくりとうなだれた。
「昨日から思ってたけど、どうしてそんなに私のことを知ってるんですか?」
「澤口さんが以前からなにかと星乃の話を聞かせてくれていたからな」
そうだったんだ、知らなかった。
以前から結婚だ孫だと言われるたびに流していた私。このままではいけないと、前々から大倉さんに話をしていたのだろう。
その情報がこんな形で活用されるなんて。
話していると戸が開けられ、女性が飲み物とお通しを運んできた。