クールな社長の溺甘プロポーズ
「澤口、結婚どころか彼氏もいないもんねぇ。あはは、さみしー」
「うっ……」
けらけらと笑われ、バカにされる。けれど、否定ができないから余計悔しい。
昨日の友人たちとの女子会。
昔は皆同じだったのに、今では母となり妻となり……ひとり身なのは私だけ。
それでも彼氏がいるとか恋をしてるとか、そういう話があればまた違うのだろうけれど、彼氏もいなければ恋の相手もいない。
それどころか、ときめくような出来事すら最近経験していない。
結局昨日も皆から『婚活した方がいいよ!』とか『誰か紹介しようか!?』と口々に言われてしまった。
その時のことを思い出し苦笑いが出た。
「けど、澤口って半年前に付き合ってた彼氏と『結婚するかも』って言ってたよね。なのになんで別れちゃったんだっけ」
「……フラれたんですよ。いつものことですけど」
話しながらデスクの上の書類を手に取りまとめると、背後からは柳原チーフの「あー」と納得するような声がする。
「また言われちゃったんだ?『お前は仕事があればいいんだろ』って」
その言葉によみがえるのは、半年前に付き合っていた彼から言われた全く同じその言葉。
それをかき消すかのように、ぐしゃぐしゃと頭をかく。