クールな社長の溺甘プロポーズ
「け、けど、今は仕事が忙しいし。まだそんなに焦らなくても……」
「まだ、なんていい歳していつまで言っているつもりだ?」
『いい歳』、そのひと言が先ほどより深く痛いところに刺さる。
悪かったわね、いい歳で。『まだ』なんて言い訳がましくて……。
あぁもう、キレた。ムカついた。
その苛つきぶつけるように、私は手元にしていたお箸をダンッとテーブルに叩きつけた。
「わかった、撤回する。仕事云々言い訳なしで、あなたみたいな冷たくてムカつくデリカシーのない男とは結婚したくない!だからこの話は終わり!以上!!」
どうよ、ここまで言えば充分でしょ。
自分に非があるとなればこれ以上は言えないはず、と、私は誇らしげに彼の反応を待つ。
「……ほう。優しいほうが好みか」
すると大倉さんは突然立ち上がり、私の隣へとひざまずく形で屈む。
そして私の右手をそっと取ると、そのまま自然に私の体を畳の上に押し倒した。
「きゃっ……なにするの!」
「頑ななのは結構だが、俺にも譲れないものがある。言ったはずだ、『頷かせてみせる』と。そのためなら力づくですることだってできる」
黒い瞳に私を映して、妖艶に微笑む。
店内の淡いオレンジ色の照明と相まってその表情がなんとも色っぽく、不覚にも胸はドキリと音を立てた。
って、こんな状況でなにときめいてるの!単純すぎ!
この男、クールに見えてこういう仕草で女性を落としてきたに違いない。
そうはいかないんだから。私は言いくるめられるような簡単な女じゃない。
だけど、なにを言っても聞いてくれないし、引いてくれない。しぶとい人だ。
でもこのまま力づくでどうにかされるなんてごめんだ。
どうすればいいのやら……あ、そうだ。それなら。
考えた結果ふと思いついた作戦に、私は彼に押し倒されたまま平然を装い口を開く。