クールな社長の溺甘プロポーズ
よし、引きなさい!
そして今すぐ『この話はなかったことに……』って破談にしなさい!
「スッピンだと幼く見えるな。だが目元にクマが出来てるぞ。きちんと休養をとれ」
「あ……はい」
彼はそう言いながら、自分の目元を指す。
幼く見える?若く見えるってこと?本当?ってそうじゃなくて!
なんで引かないの!?寧ろ労わるなんて、ありえない!
いや、ここで諦める私じゃない。
私にはまだドン引きさせる要素が残っているんだから。……って、自分で言って悲しいけれど。
でも結婚話をなくすためなら背に腹は変えられない。
「大倉さん、私身支度したいから隣のリビングで待っててくれる?」
「あぁ、わかった」
「ちょっと散らかってて恥ずかしいけど、気にしないでね」
にこ、と笑って隣の部屋へ彼を促す。
すると大倉さんはなんの疑いも持つことなく、寝室から隣のリビングへと向かって行った。
ふふ……『ちょっと』なんて言ったけれど、実はそれどころじゃない。
そう。普段は仕事ばかりで片付けなんてする余裕のない私の部屋は大荒れだ。
特に生活の中心であるリビングは、正直言って女の部屋ではないレベル。
実際元彼でも部屋を見て引かれて疎遠になった人がいたっけ。
さすがにあれを見れば大倉さんだって。
ついニヤリとしてしまいながら、ベッドから降り私もリビングへと向かう。
どんな顔をしているだろうかとドアから部屋を覗き込めば、服やタオル、雑誌など様々な物が散らかった荒れた部屋を目の前に立つ大倉さんの後ろ姿。
やっぱり、引いてる引いてる。