クールな社長の溺甘プロポーズ



「大倉さん、どうかした?」



白々しくそう尋ねた、その時。

大倉さんはジャケットの胸ポケットから黒いスマートフォンを取り出し、どこかへ電話をかけ始める。



「どうも、大倉です。今日大丈夫ですか?いえ、うちではなくて今から言う住所で。なかなか根気が入りそうな部屋なので、2名くらいで来ていただけた方がいいかと」



ん?なんの電話だろう。

耳を傾けていると、彼はどこで調べたのかこの部屋の住所を口にする。



「えぇ、代金はいつもの口座から引き落としてください。はい、では」



手短に電話を終えた大倉さんに、つい声をかける。



「あ……あの、なんの電話?」

「ん?あぁ、ハウスキーパーにこの部屋の掃除を頼んだ。俺も月一で利用してる、信用できる業者だ」

「はぁ!?」



ハウスキーパー!?

そういえば、この前もそんなことを言っていたっけ。



「仕事が忙しければ部屋が散らかるのも仕方ないだろ。こういうときは業者を頼るのが一番効率がいい」



そうあっさりと頷くと、大倉さんは私の頭をぽんと撫でた。



な、な、な、なんで……。

なんでそんなに心が広いの!?なんでも受け入れ飲み込んじゃうの?ブラックホールなの?



私が大倉さんの立場だったらドン引きする。絶対する。

にも関わらず、相変わらず冷静な彼にどう反論しようか悩む。

すると彼はそんな私を見てふっと笑った。


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