クールな社長の溺甘プロポーズ
大倉さんはどうやったら引いてくれるのか……。
そうだ、男の人の苦手なタイプは男の人のほうがわかるかもしれない。
「あの、米田さんの嫌いなタイプの女性ってどんな人ですか?」
「へ?嫌いなタイプ?好きなタイプじゃなくて?」
「はい、嫌いなタイプ。男はこんな女性が苦手とか、嫌いになるとか」
モテる米田さんは、好きなタイプは聞かれたことがあっても嫌いなタイプはあまり聞かれないのだろう。難しそうに「うーん」と考え込む。
「苦手なのはやっぱり理不尽でワガママな人だな。昔の彼女が『私を好きなら好みを知ってて当然でしょ、察してよ』って感じでさ」
「米田さん、モテるのになんでそんな女に……」
カッコよくて優しくて、それなのに現在独身で彼女なし、というのがなぜか少しわかってしまった気がする。
けれど、ふと気付く。
そっか、それなら私も大倉さんにワガママを突きつけてみよう。
今夜も迎えに来るって言ってたし、よし。
以前念のため連絡先を交換したことを思い出し、私は再度スマートフォンを取り出して彼へメッセージを送る。
【今夜の食事は私が満足できるお店を探しておくこと。私が満足できなければ結婚の話はなし!!】
なんとも一方的で偉そうな文面。
だけどこれなら、さすがの大倉さんも参ったと根をあげるだろう。
「おい澤口、今お前すごい悪い顔してるぞ……」
思わず米田さんも突っ込んでしまうほどニヤリと笑みを浮かべていると、すぐにメッセージの返信がきた。
【了解】
絵文字も顔文字もない、飾る言葉すらもない簡潔な返事。
だけど今頃、焦っているのか苛立っているのか。
私がどんな女に見られようと、うんざりして破談にしてくれればこっちのもの!
ポン、と音を立て止まったエレベーターから降りると、私はその怪しい笑みのままオフィスへと向かって行った。