クールな社長の溺甘プロポーズ
そもそも、大倉さんはどうしてあんなに結婚にこだわるの?
あの見た目で有名企業の社長となれば、女性だってよりどりみどりだろう。
いくらお父さんの会社をグループに入れたいからって、自由を捨ててこんなだらしない女と結婚しようなんて思う?
そういえばお父さんはさっき『6歳の頃から』って言っていたっけ。
ということは、お父さんと大倉さんの親との関係性も理由のひとつかも。
例えば、結婚話は実は自分の親から強いられたもので断れない、とか?
大企業の社長となればそういう事情もあるのかもしれない。
けど、それと私は別だ。遠慮なく断らせてもらう。
……結婚なんてしても、どうせ家庭と仕事の両立なんてできない。
これまで何度も、恋人より仕事を選んできたような人間だ。形だけの結婚なんてしてみても、どうせすぐダメになる。
その度責められたり、『やっぱり』と自己嫌悪に陥ったり、好きなはずの仕事が憎く思えたりするのは、もう嫌だ。
「柳原チーフ、澤口さん、秋冬商品のデザインあがってきたので確認お願いします」
今朝のことなど記憶の片隅に無理やり追い込み、仕事に取り掛かる。
するとデザインチームのリーダーである社員から渡されたのは、来シーズンの秋冬物のデザイン画だった。
柳原チーフと覗き込む用紙に描かれるのは、ボルドーやテラコッタ、モスグリーンなど、秋ならではのアクセントカラーを中心にしたコーディネート。
上品だけど日常使いのできるスタイリングで、もちろん値段も抑えめだ。