クールな社長の溺甘プロポーズ
今日も一日、バタバタとしているうちに定時を迎えてしまった。
明日は定例会議だ。先月の売上と今月の売上推移、まとめておかなくちゃ。
バサバサと書類を探しながらパソコンのページを開き、とまだあがるつもりもなく仕事を続けようとした、その時。
オフィスのドアがガチャリと開き、女性社員が顔を出し私を見つけた。
「あっ、澤口さん。お迎えいらっしゃってますよ」
「へ?」
お迎え?
って、なにが?
そう一瞬考えてから、ハッと察する。
そういえば、夜も迎えに来るって言っていた。ということは、大倉さんだ。
少しの残業もさせない、ってことか。
またわざわざロビーで待っているんだろうな。
せめて駅で待ち合わせとかにしてくれないだろうか。
そう考えながら、残りの仕事は明日の朝やろうと終了させ、荷物をまとめてオフィスを出た。
エレベーターで下りてロビーに出て、そこで今日も女性たちの視線の真ん中にいたのはやはり大倉さん。
彼はすかさず私を見つけると、「星乃」と手を小さく上げ挨拶をしてみせた。
「お疲れ」
「随分とお早いお迎えで……社長って暇なのかしら」
「暇じゃないが多少は融通がきく。星乃を優先して早く仕事を切り上げてきたんだ」
そうですか……羨ましい限りで。
一日仕事を終えたにもかかわらず、その見た目はすっきりとしており疲れは見えない。