クールな社長の溺甘プロポーズ



「本当ね?満足できなかったら本当に結婚の話はなしだからね?」

「わかってるって」



念押しするようにたずねるけれど、彼はやはり堂々としている。

やけに自信があるようだけど、その冷静さもいつまで保てることか。



いくらお父さんから私についての話を聞いているとはいえ、お店の好みまでは把握できるわけがない。

勝った、と心のなかでガッツポーズを決めていると、しばらく歩いてきた先で大倉さんは足を止めた。



見れば目の前には、いたって普通の小さなビル。

飲食店がいくつか入っているらしいその建物の、地下へ続く階段を下る。



下ったところにあったのは【dining bar AQUA】と書かれた看板。

ダイニングバー、ということはオシャレな雰囲気のお店って感じかな。

そうイメージを膨らませながら、彼が開けたドアからお店へ入った。



するとそこには、薄暗い店内を照らす青い灯り。

それは壁一面にある大きな水槽で、その中には黄色やピンクなど色とりどりの小さな魚が泳いでいる。

まるで水族館のような素敵な店内に、自然と「わぁ」と声が漏れた。



「すごい、綺麗」

「アクアリウムダイニングバーだ」



そう言って大倉さんは「予約しておいた大倉ですが」と名乗る。

店員さんに通されたのは奥にあった個室。

4人がけ用の広くはない個室にも壁に水槽が置かれており、中には赤い金魚がゆらゆらと泳いでいる。



今朝の連絡からお店を探して予約まで……やっぱりデキる人だ。しかもアクアリウムというチョイスがまた絶妙に好みだ。

席に着きながら青く照らされる水槽内を見れば、赤く美しい金魚が数匹泳いでいる。



綺麗、かわいい。

そう思うと同時に、昔実家にも大きな水槽があったことを思い出した。


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