クールな社長の溺甘プロポーズ
「そういえば、澤口の彼氏ってどんな人なの?」
「へ?」
どんな人?
柳原チーフからの唐突な質問の意味がわからず、カップ片手に首をかしげる。
「どんな仕事をしてて、どんな食べ物が好きで、趣味とか特技とか、性格とか。いろいろあるじゃない?そういうのまだ聞いてなかったなーって思って」
仕事、好み、生活……。
それなりに会う回数は重ねているはずだし、普通ならそこそこ答えられるはずの話題。
けれど、えーと、と考えてみても答えが浮かんでこない。
「どんな人、なんだろ……」
「えー?またまたぁ、とぼけないでよ。恥ずかしいのはわかるけどさ」
柳原さんは私が照れていると思い込んでいるようで、からかうように笑うけれど、やはり答えは出ない。
言われてみれば私は、大倉さんのことをなにも知らない。
一見不愛想で、悪い人ではない。
お父さんと子供の頃からの知り合いで、オオクラ自動車の社長というくらいまでしかわからない。
結婚なんてしない、のひと言で突っぱねて、理解しようともしなかったし。
……別に知る必要なんてないもの。
下手に彼を知る方が、断りづらくなってしまう気もする。