クールな社長の溺甘プロポーズ
その日の定時。私はいつも以上にぐったりとした顔でオフィスを後にした。
あぁ……今日はいつもより疲れた。
いつもなら店舗のパソコンから商品在庫数や情報が見られるようになっている。
ところがそのサーバーがエラーを起こして見られなくなったことに、店舗スタッフからはクレームが相次いだのだった。
システム関係はシステム課にクレームつけてよ……。
そうは思いつつも、丁寧にスタッフに謝ってフォローを入れたけれど。
はぁ、と疲れた溜息を吐きエレベーターに乗ると、私より先に乗り込んでいた米田さんがいた。
「おー、澤口……お疲れ」
米田さんのブランドも同じ状況で大騒ぎだったのだろう。整ったその顔も疲労困ぱいだ。
「いやー……今日のシステムエラーはまいったな」
「本当……店舗から『在庫確認が出来ない!資料も見れない!』ってクレームすごかったですよ」
お互いの苦労を分かち合いながら、1のボタンを押すと、エレベーターは下っていく。
「けどお前はこれからデートだしいいよな。俺なんてひとり寂しく帰るだけだぞ」
「米田さんくらいの人なら飲む相手くらいすぐ見つかるじゃないですか」
「じゃあ、たまには澤口が付き合えよ」
そう言って、米田さんは私の横の壁に手をつく。
その時、タイミングよくエレベーターは一階に止まりドアが開いた。
そこにはちょうどうちの会社の女の子たちが、このまま食事にでも行くのか集まっている。
「おーいみんなー、米田さんがご飯連れて行ってくれるってー」
声をかけると彼女たちからは「え!?」と嬉しそうな声が、そして米田さんからは「は!?」と驚きの声が聞こえた。
「本当ですか!?やった、米田さんとごはん〜!」
「いや、ちょっと待て、俺はだな……」
あっという間に群がる彼女たちに、身動きのとれなくなる米田さん。
そんな光景を横目で見ながら、私はスタスタとその場を去って行った。