クールな社長の溺甘プロポーズ



「ねぇ、大倉さんっていくつ?」

「32だ」

「4つ上……」



見た目同様、やっぱり30代前半だった。

けれど、私と4つしか変わらないのにこの落ち着きっぷりはすごい。思わず感心してしまう。



「社長っていうのは、お父さんの跡を継いで?」

「あぁ。父親がオオクラグループの会長になったのを機に、2年前に俺がオオクラ自動車を任された、という形だな」



へぇ。オオクラグループといえば、オオクラ自動車を始めとした系列会社を取りまとめる大きなグループだ。

それにしてもその年齢で社長を任されるなんて、やはり優秀な人なのだろう。



大企業の社長、会長という日頃自分の暮らしからは縁遠い世界に、なんとなくでしか想像できない顔で頷いていると、大倉さんはふっと笑う。



「なんだ、ようやく俺に対して興味が出てきたか?」

「ま、まぁね。少しくらいなら知っておいてあげてもいいかなって」

「上から目線だな」



素直に『知りたい』とは言えず偉そうな口ぶりになる私に、彼は「はは」とおかしそうに笑った。



少しくらいは、知りたい。あなたのこと。

年齢、職業、それ以外にも好きなことや嫌いなことも、知りたい。



けど今一番知りたいと思うのは、その心。

私は大倉さんの目を見つめて、「ねぇ」と声をかける。



< 70 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop