クールな社長の溺甘プロポーズ
「正直に言って。一日置きとはいえ朝も夜も来るって、大変じゃない?融通がきくとはいえ、立場上付き合いや他に優先させなくちゃいけないことがあるんじゃないの?」
それは、無理しているんじゃないかという気持ちからの言葉。
もし無理をしているのなら、大変だと思いながらも来ているのなら。
そこまでして続けることなのだろうか。
けれど、大倉さんはそんな私の不安に対しても首を横に振る。
「大変なんかじゃないし、会いたい人に会いに来るのにそんな気持ちは抱かない。大丈夫だ」
「けど……」
「星乃は『無理をしてる』って思ってるかもしれないが、これは俺が好きでしてることだから」
そう言って、黒い瞳は私を見つめ返した。
……そんなの、嘘。
お父さんの会社を自社のものにするため。
全ては仕事のため。
それをうまく隠すために甘い言葉を使っているだけ。
わかってる。わかってる、けど。
こんな風にまっすぐ見つめて伝えられたら、心も掴まれそうになってしまう。
その時、突然強風がビュウっと吹いた。
「わっ」
揺れるボートの上、驚き髪を押さえると、風は花びらを舞上げる。
「すごい風……びっくりした」
「一瞬とは言え強かったな。よかった、転覆しなくて」
乱れた髪を整えていると、大倉さんはなにかに気づいたようにこちらに目を留めた。
「髪に花びらがついてるぞ」
「へ?本当?」
強風でついてしまったらしい花びらをとろうと、手探りで前髪に触れる。
けれどいまいちポイントがズレているらしく、大倉さんは少し見守っていたもののもどかしそうに手を伸ばした。