クールな社長の溺甘プロポーズ
◇5.ワガママにも笑って





桜の下、絡められた指から、少しずつ少しずつ、確実に彼が近づいていることを感じた。



冷たくて大きな手。

その感触が、消えないよ。






ぱち、と目を覚ます日曜の朝。

窓の外からはチュンチュン、と小鳥のさえずりが聞こえた。



「朝……」



珍しく早くに目が覚めたのは、きっとここ最近早起きする習慣がついてきたからだと思う。

これまではギリギリまで寝ていたけれど、大倉さんが家にくるから寝ていられなくて、自ら早起きするようになったんだよね。

その習慣が日曜にもついてしまうなんて。



もう少し寝ていたかった気もするけれど、こうなってしまってはもう二度寝は出来ない。

観念して起きようと決めて体を起こし辺りを見回すと、ベッドのある寝室はホコリひとつなく綺麗だ。



大倉さんは私の家へハウスキーパーを週にニ度来るよう指定してくれたようで、それ以来掃除や洗濯をこまめに行ってくれている。



女としてまずいな、この生活……。

ただでさえ家事をしなかったのに、今ではほぼ全くしていない。しかも大倉さんのお金で来てもらっているわけだし。

けど大倉さんは『楽になるなら使うべきだろ。金は気にするな』と譲らないし……。



どうするものかと考えながら、テレビでも見ようと寝癖頭のまま寝室を出る。

すると、不意に漂うコーヒーの香りが鼻をくすぐった。



「星乃。起きたか」



そこには、淹れたてのコーヒーを飲みながらノートパソコンを開く大倉さんの姿があった。


< 73 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop