クールな社長の溺甘プロポーズ
「で?誘いにって、どこに?」
「ツテでチケットを貰ってな。星乃なら興味があるんじゃないかと思って」
そう言いながら大倉さんが見せたのは、二枚のチケット。そこには【fantastic show/autumn・winter collection】と書いてある。
これって……有名高級ブランドが開く、ファッションショーじゃない。
来シーズンの商品が先行公開されるということもあり、アパレル業界はもちろんファッション業界全体が注目する。限られた人しか観ることのできないレアなショーだ。
「えっ、このショーのチケットが取れるなんてすごい!一体どんなツテが!?」
「友人からちょっとな」
「どんな友人!?」
いや、大倉さんの友人となればすごい人のひとりやふたりはいそうだけど……。
案の定すぐ食らいついた私に、大倉さんはコーヒーをひと口飲んでふっと笑う。
「行くかどうか聞くまでもなさそうだな。早く支度してこい」
「う、うん!」
いつもなら素直に返事などできないだろう。けれど、レアなショーが観られるとなれば気持ちは逸り、私はバタバタと部屋をかけて身支度を始めた。
せっかくのショー、とはいえあまりにもドレッシーな格好で行くのは違うよね。大倉さんもシャツにパンツの私服姿だし。
そう彼とのバランスや会場の雰囲気を想像しながら、手に取ったのはライトグレーのワンピース。
ほのかにラメの入ったカーディガンを肩に羽織り、バッグは小ぶりのクラッチバッグを持つ。
そしてメイクをして髪を巻き……ようやく終えた身支度に、それまで待ってくれていた大倉さんとともに家を出た。