クールな社長の溺甘プロポーズ
「私も、幸せを届ける側の人間になりたいって思ったの」
いつか私も、その一枚を通していろんな人の笑顔を見たい。そう、思った。
初めて話した夢の話に、なんだか照れくさくて、ごまかすようにコーヒーを飲む。
けれど、その時ふと気付く。
私、この話を誰かにすること、初めてじゃない気がする。
でも、誰に?
友達にも、これまで付き合ってきた相手にも話したことはないはず。
「星乃?どうかしたか?」
「あっ、ううん。なんでもない」
モヤモヤする気持ちを隠すように首を横に振ると、大倉さんは不思議そうにしながらも渋々納得する。
「さて、じゃあこのあとは俺の用事に付き合ってもらおうか」
「え?」
大倉さんの、用事?
それがなにかなど一切想像がつかず、私はきょとんと首を傾げる。
けれど彼は教えてくれることはなくコーヒーを再び飲む。
そしてふたりともコーヒーを飲み終えカフェを出ると、車に戻り、大倉さんはどこかへ向かい車を走らせた。
行き先もわからず、連れられるがままやって来た先は横浜駅近くの一軒のお店の前。
「降りるぞ」
「え?う、うん」
車から降りて見れば、そこはショーウィンドウにワンピースを着たマネキンが飾られたショップだった。
ドレスショップ?
どうしてこんなところに?
そう思いながら見れば、ドアの前の看板には【ARVINO】と書かれている。
って、このブランド名……イタリアの高級ブランドじゃない!
ブラウス一枚数万円という、普段の自分では絶対手が届かないようなブランドだ。
ますますなんでこんなところに、と意味がわからない。