クールな社長の溺甘プロポーズ


平然とした顔で中に入って行く大倉さんのあとに続いて入ると、真っ白で高級感のある店内には様々な色柄のドレスやワンピース、スカートなどが並んでいる。



「あ、あの、大倉さん?ここ……」



戸惑いながら目的を尋ねようとした、そんな私の言葉を遮るように店員の「いらっしゃいませ」という声が店内に響いた。



「あら、大倉さま。お待ちしておりました。スーツのご用意できてますよ」

「ありがとう。あと、彼女に合うドレスを見繕ってくれないか。金額は問わない」

「えっ?あの、ドレスって?」



状況が全く理解できないまま、店員に背中を押されて奥のフィッティングルームへと押し込まれる。

そして、あれじゃないこれじゃないと様々な服を着せられること数十分後……。



「はい、お疲れ様でございました」



店員の言葉に鏡の前に立てば、そこにはボルドーのワンピースに身を包んだ自分の姿があった。

ひとつにまとめた髪型にデコルテが強調され、体のラインに沿った少しタイトなワンピースと、高めのヒールに、ぴんと背筋が伸びる。



なんだか自分じゃないみたい……。



「似合ってるな」



その声に振り向けば、こちらを見る大倉さんがいた。



その姿は黒いスーツに中にはグレーのベストを合わせたパーティースーツ。

私が着替えているうちに彼も身支度を終えたのだろう。



わ、かっこいい。普段のスーツ姿もキマッているけど、パーティースーツだと上品さが増して社長の風格を感じさせる。



「支度も終わったし行くか。ありがとう、世話になった」

「いいえ、またお待ちしております」



にこりと微笑む店員に見送られ歩き出す大倉さんに、私も慌ててついていく。


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