クールな社長の溺甘プロポーズ
「大倉さん、あの、なんでこんな格好を?ていうか服代……」
「代金は気にするな。支払い済みだ」
「え!?」
支払い済みって、このワンピース一枚でもすごい金額だったのに!
そこにさらに靴、バッグ、ヘアセット……いくらになるか想像がつかない。というか、想像するのが怖い。
けどそんな金額のものを出してもらうわけにもいかないし。
「いくらだった?私払うから、正直に言って!」
「いくらだったかな。忘れた」
「そんなわけないでしょ!」
彼のことだからきっときちんと把握していると思う。
けれど気を遣わせたくないからか、はぐらかすように言って車に乗る彼に、むくれながら私も乗る。
「……こんな高いもの、すんなり受け取れってほうが無理だわ」
ぼそ、と呟いた言葉に大倉さんはふっと笑うと運転席からこちらへ腕を伸ばす。
「それでも受け取ってほしいんだ」
そう言って、指先で私の鎖骨をそっと撫でる。
人に触れられないようなところを撫でられたくすぐったさに、ついピクッと反応してしまう。
そんな私の反応を見て、大倉さんはいっそう嬉しそうに笑うと私の額にキスをした。
「綺麗だよ、星乃」
肌に触れた、指先と唇の感触に、全身の体温が一気に上昇する。
「なっ、なななっ、なにをいきなりっ……」
きっと真っ赤になっているだろう顔で声を震わせる私を見て、彼は体を離すとシートベルトを締めて車を走らせ出した。
不意打ちでそういうことするから、反則……!
こういう私のリアクションが面白いからからかわれているのだろう。けど、そうわかっていても照れてしまう。
バクバクと鳴る心臓を落ちつけながら、走り出す車の窓から外を眺めた。