クールな社長の溺甘プロポーズ


「あの……そういえば、こんな服装でどこに行くの?」

「これから仕事関係でクルーズパーティーがあってな。せっかくだから星乃にも同席してもらいたい」



彼が平然と言ってのけるその言葉に、一瞬固まる。



「クルーズパーティーって……な、なんで私まで!?」

「当然だろ。夫婦になる予定、つまりは婚約者なんだから」

「うっ……」



確かに、そういう形になるのかもしれないけれど……でも待って。

大倉さんの仕事関係ということはきっと、いや確実に要人が揃うような豪華なパーティーだろう。

そんなところに私が参加していいの?というか、上手く振舞える自信もない。



「無理!そんなところ行けない!」

「大丈夫だ。笑って俺の横に立っていればそれでいい」



そんなこと言ったって……!

そう納得しきれない私にも、彼は有無を言わさず車を走らせた。

そして、やってきた赤レンガ倉庫近くの乗り場に車を停め、大きなクルーズ客船に乗り込んだ。



「星乃」



大倉さんは、名前を呼んで肘を軽く曲げる。

その仕草から『腕を組め』という意味を察し、私はおずおずとその腕をそっと掴んだ。



自然と近付く距離に、緊張で体がこわばってしまう。

ちら、と見た彼は至って普通の顔のままだ。



……余裕って感じ。

そうだよね、パーティー慣れしてるだろうし、こうして女性を連れて歩くのなんて普通だよね。

自分との差にがっかりしてしまう。


< 84 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop