クールな社長の溺甘プロポーズ
「あの……そういえば、こんな服装でどこに行くの?」
「これから仕事関係でクルーズパーティーがあってな。せっかくだから星乃にも同席してもらいたい」
彼が平然と言ってのけるその言葉に、一瞬固まる。
「クルーズパーティーって……な、なんで私まで!?」
「当然だろ。夫婦になる予定、つまりは婚約者なんだから」
「うっ……」
確かに、そういう形になるのかもしれないけれど……でも待って。
大倉さんの仕事関係ということはきっと、いや確実に要人が揃うような豪華なパーティーだろう。
そんなところに私が参加していいの?というか、上手く振舞える自信もない。
「無理!そんなところ行けない!」
「大丈夫だ。笑って俺の横に立っていればそれでいい」
そんなこと言ったって……!
そう納得しきれない私にも、彼は有無を言わさず車を走らせた。
そして、やってきた赤レンガ倉庫近くの乗り場に車を停め、大きなクルーズ客船に乗り込んだ。
「星乃」
大倉さんは、名前を呼んで肘を軽く曲げる。
その仕草から『腕を組め』という意味を察し、私はおずおずとその腕をそっと掴んだ。
自然と近付く距離に、緊張で体がこわばってしまう。
ちら、と見た彼は至って普通の顔のままだ。
……余裕って感じ。
そうだよね、パーティー慣れしてるだろうし、こうして女性を連れて歩くのなんて普通だよね。
自分との差にがっかりしてしまう。