クールな社長の溺甘プロポーズ
「……なんだ?」
「優しい人なんだって、思って」
ぼそ、とつぶやく私の言葉に、彼は驚いた顔をする。
「初めて言われたな。無愛想だとか冷たい、とかはよく言われるけど」
「でしょうね」
「少しくらい否定しろ」
言い合ってから、顔を合わせてお互い笑う。
不思議。大倉さんと過ごす時間が、こんなにも心を穏やかにしてくれる。
自分のことを知ってもらうこと。
彼のことを知ること。
それらがふたりの距離を近付けて、自然と笑みがこぼれてしまう。
彼の隣が居心地がいい。
「風が出てきたな。中に戻るか」
そう言って、大倉さんは私に手を差し伸べる。
それに応えるように手を重ねると、長い指にそっと包まれた。
「まともに食事は取れなさそうだし、帰りにどこか寄って行くか」
「うん。あー、なんか今日はラーメン食べたいかも」
「……いいだろう。この格好でも行けるようなラーメン屋を探してやる」
ワガママを言う私に、呆れたように笑う彼。
けれどつなぐ手に自然と込められる力が、ふたりの距離の近さを示した。