クールな社長の溺甘プロポーズ




「ん……さむい」



肌寒さを感じて目を覚ますと、そこは朝陽の差し込む自宅のリビング。

テーブルに伏せるようにして寝ていた自分と、周りには何本ものビールの空き缶が散らかっていることから、昨夜の記憶がよみがえる。



そういえば昨日、沙也加と会ってから過去のことを思い出してモヤモヤして……ひとりで飲んで気持ちを紛らわせていたんだっけ。

その結果酔いつぶれて寝ていたわけだ。



「うっ、体痛い……」



変な姿勢で寝てしまったせいだろう。背中と腰がつるように痛い。

けど、もう朝だし急いでゴミをまとめて身支度を始めなければ。そのうち大倉さんが来てしまう。

そう思いゆっくりと立ち上がった瞬間、部屋のドアが開けられた。



「おはよう、星乃。インターホン鳴らしても反応がなかったが起きてる、か……」



突然姿を表した大倉さんは、今日も形のいいスーツに身を包みこちらを見る。

一方で私は、だらしない部屋着姿。おまけにテーブルの上や周りにはビールの空き缶だらけ……。

その光景からなんとなく状況を察したらしい、彼は真顔のまま納得したように頷く。



「つい今さっきまで酔いつぶれて寝てた、ってところか。ひとりでヤケ酒か?」

「悪かったですね、だらしない生活で」

「悪くはないが部屋が酒臭いから換気するぞ」



大倉さんがカーテンと窓を開けると、ふわりと爽やかな風が部屋に舞い込んだ。



窓の外の青空と、風に揺れる黒い髪。

それらに、昨日から引きずっていた鬱々とした気持ちが一気に吹き飛んでいくのを感じた。



大倉さんが来ただけなのに。呼吸が、しやすくなった。

深く息を吐き出す私に、大倉さんはなにかに気づいたように目をとめた。


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