私の彼氏は小さい先輩
香は目の前の男子をまじまじと見る。


背は高く、香を見下ろす形になっていた。
整った顔、男子にしてはキレイすぎると言っていいほど白い肌。
切れ長の目。

どこをとっても美男子、といっていいだろう。

しかし、どうしても気になるところ―――髪。


目を引くのはその色と長さだった。

明るい茶色の髪を束ね、後ろでくくっている。
ハーフなのかなんなのかよくわからない。


「香ちゃん、ずっと探してたんだよ君のこと」

「…はぁ」




正直言って不審者にしか見えない、香からすると。

「あの、私あなたのこと知らないんですけど…」

「ああ、自己紹介がまだだったね。僕は大塚 禅(おおつか ぜん)。よろしく」

「え、はい」


握手を求めるように右手を差し出してきた禅に、香は後ずさる。


なんというか、怖い。

見知らぬ男子、突然求められる握手。



「…あぁ、そっか、香ちゃんあれだもんね」

「…あれ?」

「男子苦手なんでしょ?」


あぁ、寒気がする。

なにか嘲笑ったような、そんな笑顔が香は嫌いだった。


「…掃除なんで、失礼します」

小さく頭を下げて、禅に背を向ける。


「…面白いね、香ちゃん…」

禅がつぶやいたことも知らずに。





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