永遠の愛を(番外編も完結)
今も昔も、彼のことはほとんど何も知らない。

社長の私生活なんて特に、一社員でしかない私が知っているはずもない。

先輩が高校を卒業してこの街を出てからは、何年も会うことはなかった。

そんな彼と再会したあの時の私は途方に暮れていた。

祖母が亡くなり一人の生活にはもうすっかり慣れていたものの、専門学校を卒業して就職した地元のホテルが倒産してしまったのだ。

規模はそれほど大きくはなかったけど、地元では唯一の結婚式場があるホテルだった。

良く言えば古き良き時代の名残を感じさせる老舗ホテル。

悪く言えば時代遅れでセンスのかけらも感じないホテル。

だけど祖母を一人残して地元を離れるつもりは毛頭なかった私は、当時は働ける場所があるだけでも有難いと思っていた。

でも、その祖母ももう居ない。

求職活動でハローワークに通いながらも、自分の中である迷いが生じてきていることにも気づいていた。
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