永遠の愛を(番外編も完結)
港町だったその街は人口5万人ほどの小さな町で、噂なんてすぐに広まったのだろう。

母がいなくなってからの祖母は、一段と優しくなった。

私に元気がない時は決まって海に連れて行ってくれた。

どうして海だったのかは分からない。

その街には、他に娯楽と呼べるものがほとんどなかったからかもしれない。

だけど、果てしなく続く広い海を見ていると母のいるどこかに繋がっている気がして少しだけ寂しさが紛れる気がした。

そして、いつかこの海の向こうから迎えにきてくれると信じていたから。

海の向こうから…なんて外国に行ったわけでもないのに。

それでも当時まだ幼かった私はそう信じていたのだ。
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