永遠の愛を(番外編も完結)
祖父は定年で仕事を引退してから、家で小さな書道教室を開いていた。

九州男児で頑固一徹親父の風貌漂う祖父は、見た目に反して私にも書道教室に通う子供達にもとても優しかった。

耳が遠いため「先生、トイレ貸してください」をよく聞き間違えて、子供達がなかなかトイレに行けない珍事が頻繁に起こってはいたけれど。

そんなある日、ある男の子が半紙に筆で “ お手洗い ” と書いて祖父に見せた。

それからは、トイレに行きたい時は “ お手洗い ” と書く子が増えた。

ほとんどの子が自筆のそれを一枚は持っていて、いつしかトイレに行きたい時は祖父にそれを見せるのが定着するようになった。

祖父がよく聞き間違えをするのもあって、子供達の明るく元気な笑い声が絶えない教室だった。
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