永遠の愛を(番外編も完結)
私に会うため、仕事を休んで東京まで来てくれた母は、あの後トンボ帰りで地元へと帰っていった。

駅まで送っていく途中、何度も申し訳なさそうに謝る母に、そんなに謝らなくてもいいのにと思ったけれど、それも今はまだ仕方がないのだろう。

幼少の頃から今日《こんにち》まで、私たちの間には二十数年という空白の時がある。

普通の親子とは違って、遠慮やぎこちなさがあるのは当たり前で。

それを寂しくは感じるけれど、焦る必要はないのかもしれない。

私たちは、まだ始まったばかりだから。

母が何度も「ここまででいいよ。ありがとう。」と遠慮気味に私を制すから、今日のところは改札前で別れるつもりだった。

私に向かって小さくぎこちなく手を振り、改札をくぐり抜けた母。

そして頭上にある電光掲示板をしばらく眺めた後、もう一度こちらを振り返った母が優しい微笑みを浮かべ頭を下げた。
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