永遠の愛を(番外編も完結)
すぐにエンジンをかけ車を発進させた先生に先輩との事を『大きな誤解ですよ。』と言えなかったのは、バックミラーに映った先生の顔がやけに強張って見えたから。

怪我…だと言っていたし、大した事はないと思いたい。

私にはもう家族は祖母しかいない。

祖母がいなくなったらどうしよう…そんなことばかりが頭の中をグルグルと回っていた。

よほどひどい顔をしていたのだろうか。

いつの間にか信号で止まっていた先生がこっちを振り返り

「おばあさんはちゃんと意識もしっかりしているそうだから安心しろ。大丈夫だ…」

と先生のひどく優しい声が耳に入ってきた。

それを聞いて無意識に入っていた体の力が少し抜けた気がした。

いつの間にか手汗までかいていた掌には自身の爪の跡がくっきりと残っていた。
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