【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
亡くなった父の後を継いだのは、私が5歳の時父が再婚して出来た義理の母の弟だ。
私にとっては叔父に当たるけれど、私は義理の母とは上手くいっておらず、大学生の時父が亡くなってからは母方の祖母の家に身を寄せていた。
そしてその祖母も昨年亡くなり、今は一人で祖母の家に住んでいる。物心つく前に母は亡くなり、父も祖母もいなくなってしまった私はひどく孤独な存在だ。

「なぜ……、と聞かれましてもAgresで働きたかったから、としかお答えできません。それに佐伯との繋がりを隠していた訳でもありません」

「うん、まあ隠していたつもりはないだろうけどね。でも佐伯コーポレーションとはこれから業務提携を結びたいところもあってさ。何か特別な理由があってうちに来たのかなって勘ぐってみただけ、だよ」

「……それって、私に何か理由があって、佐伯のためにAgresに来たんじゃないか疑ってるってことですか……?」

「はは、はっきり言うね。その通りだよ。疑ったんだ。だって佐伯と組みたい企業なんて山ほどいるし、うちだって中々話が進まなくて手を焼いてる。なのに突然そこのご令嬢が社員として存在してることに気付くんだよ?何かあるのかも、って疑うのは当然だよね」

そう言って社長は私の反応を窺うかのような目を向けてきた。

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