【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「えっ、暁斗さんが緊張……?手汗ですか……?」
確かめてみなよと言わんばかりに暁斗さんが目で促すので、私はそっと向けられた手に触れる。
「あ……、ホントだ……」
「でしょ?ダサいよねえ。俺Agresの社長だよ?週刊紙じゃセレブなイケメン社長とか書かれてんのにこのザマ」
はあ、とため息をついて天井を仰ぐ暁斗さん。
いつも軽く後ろに流されている髪は半乾きで、下ろされたままなのが少し幼く見える。
手汗が恥ずかしいとか言って焦ってる暁斗さんがものすごく可愛いと言ったら怒るだろうか。
「いや……そう、まずは……ごめん」
そう言って暁斗さんは深々と頭を下げる。
そういえばこうして頭を下げられたのは2度目だ。
だけどやっぱり大企業の社長からこんな風に頭を下げられると恐縮してしまう。
「暁斗さん、私なんかに頭を下げちゃダメです」
「違うよ。美緒にだからこうしてるんだよ。俺、そんなに頭下げる場面ってないんだよ。って、君には2回目、かな?」
「はい。覚えてらしたんですね」
「そりゃ覚えてるよ。俺ホントいつも偉そうだからさ。頭を下げられることはあっても余程のことがない限り下げないかな」
「じゃあ、今回は『余程のこと』なんですか?」
当然、私にとっては『余程のこと』になるけれど。
暁斗さんにとっては、たくさんある経験の中の一つに過ぎない。
そう思うと寂しいけれど、それが事実だと思う。
暁斗さんには特定の誰かはいなかったかもしれないけど、これまでたくさんの女性と関わってきたはすだから。