【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「ーーーー君がうちを気に入って選んでくれたっていうことはよくわかったよ」

「あ、ありが……」

「だからと言って疑いが完全に晴れた訳じゃないけど」

「……じゃあ、私はクビってことですか……?」

佐伯とは違う自由な社風に憧れ、自分のやりたいことを思いっきり、誰の束縛も受けずにやってみたい、自分の力を試してみたい。そう思って目一杯努力して、やっと入社出来たのに。

結局私は佐伯からーーーーいや、あの人から逃げることは出来ないんだろうか。

「クビ?そんな理不尽な真似はしない。自慢じゃないがうちに入社するのは簡単なことじゃない。学歴だけじゃなく、その人となりを見て判断している。わが社に本当に必要な人材かどうかを厳格に見極めているつもりだよ」

「……では私はどうしたら……」

「君はわが社にとって必要だと判断したから、今君はここにいる。そんな優秀な人材を手放すことはデメリット以外の何物でもない。だから、異動してもらうことにしたんだ」

そう言って社長はにっこりと笑うけど、その顔は明らかに何かを企んでいるような表情にしか見えない。

「だからね、疑いが晴れるまで、しばらくの間そばにいてもらおうと思って。で、今回の異動、って訳さ」

< 12 / 117 >

この作品をシェア

pagetop