【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「詳細な理由が知りたいのは何故です?興味本意ですか?それとも知らなければ業務に支障が出るからですか?」

「え……、いえ、興味本意というわけでは……」

「人事異動の詳細な理由など、公にされたことはなかったと思うのですが。なぜ彼女の場合だけ知りたがるのでしょうか。興味本意と思われても不思議はないと思いますがいかがですか?」

「っ……」

「我々は社内で最も重要な機密事項に触れる機会が多くなる立場にあります。ここに所属されている方々はそういった情報の取り扱いには長けているものと信じています。今回の異動の件については、業務に支障が出た際は私に報告してください」

藤堂さんの有無を言わさぬ話しぶりに、阿川さんの他のお二人も目線を下げてしまった。
つまりはこの異動に文句は言うな、何か起きた時は藤堂さんが責任をとる、といったところだろうか。

そしてこんな空気の中、当の私としてもこの先秘書の皆さんと和気あいあいとやっていける望みはほぼ断たれたと感じている訳で。

「では佐伯さん、私に付いて来てください」

「あっ、はい」

場の空気を悪くしたことなんて気にも止めず、藤堂さんは私を連れてエレベーターへと向かう。
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