【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「あの、早速お仕事ですか?」

「いえ、今日のところは社長は電話会議など社内での仕事だけですので外出はありません。ただ、佐伯様には今日中にご対応いただきたいことがございまして」

さっきまでの威圧的な話しぶりとは違う柔らかな態度や、周りに誰もいないと『佐伯様』と呼ぶという、藤堂さんには普通のことかもしれないけれど私にとっては変わり身すごいな、とすっかり藤堂さんは私の尊敬の対象になってしまっていた。

「藤堂さん、私のことは『様』は付けない方がいのではないでしょうか」

「ですがあなたは社長の婚約者となられたので、私にとっては重んずるべき方となります」

「でも、本当に婚約している訳ではないですし、疑いが晴れるまでの間だけです。疑いが晴れたら私はまた一社員として働けるんですよね?でしたら『様』とはいらないかなと思ったんです」

私がこう話している間、藤堂さんはただ黙って話を聞いていた。その表情から読み取れそうなものは何もない。
というか、彼の無表情ぶりは完璧だと改めて気づいた。
秘書の皆さんに話していた時も私に対する柔らかな物腰の時も、表情が変わらないのだ。
変わったのは口調ぐらいだろうか。
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