【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「……分かりました。ではこれからは『佐伯さん』とお呼び致します。また、私はあなたの上司になりますので、それに相応しい接し方をさせていただきます」

「は、はい。わかりました」

藤堂さんが気を抜く時はあるんだろうか。
べろんべろんに酔っぱらったりなんてしないんだろうなあ、なんてくだらない妄想をしていると、エレベーターが止まった。

「こちらへどうぞ」

「え、ここ、ですか……?」

今まで一度も来たことのないとあるフロアで降りて少し歩いた扉の前で藤堂さんが立ち止まる。今まで来たことがないといっても入社半年なので行ったことのない階がほとんどだけど。

「中に担当の者がおりますので、詳しいことはそちらで聞いてください。私は戻りますが、佐伯さんは終わり次第終業となります」

「もう帰っていいんですか?」

「はい。……もっとも、お一人で帰られるのかは分かりませんが……」

「……?」

最後の方は一人で帰れるかと聞いたのだろうか。よく聞こえなかったけど、藤堂さんは「それでは」と軽く会釈をして再びエレベーターホールの方へ向かってしまった。

ここに来て放置か、と思いつつ激動の波からやっと解放され、一人になれてなんだかほっとした。
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