【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
けれどもう一つ仕事が残ってる。
これが終われば帰ってもいいらしいので単純だけれど気合いが入る。

それにしてもこのフロアはなんなのだろう。
人はいないしあるのはずらっと並んだ扉ばかり。
ただ部屋数は多い分、広さはないと思うので保管室とかそういう類のフロアなのか。

「とりあえず入らなきゃ……」

無機質な扉を控えめにノックすると、中から「どうぞ」という女性の声が返ってきたのでおそるおそるドアノブに手をかけた。

「失礼します……、え……」

「どうぞ、こちらへいらしてください。佐伯美緒さん、ですね?社長からお話は伺っております。いくつか取り揃えてありますので、ご試着をお願いします」

「試着って……これは……」

目の前に広がるのは服の山。
大きなクローゼットに迷い込んだかのようだ。

「ここではスーツやドレスの貸し出しを主に行っています。販売も可能です。サイズのお直しもさせたいただきますよ」

「社内で貸し出しって、それだけ需要があるってことですよね」

「そうですね。特に秘書室の皆さんはパーティ等への同伴役をなさることもあるようですし。男性の方は仕事で海外とのやり取りが深夜になり会社に泊まる場合など、スーツを借りにいらっしゃる方がいますね」

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