【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「そうなんですか……。でも言われてみれば聞いたことがあるような……」

社内にはフィットネスジムまであるぐらいだし、企画やデザイン部の人達はそもそも自分の席が決まってない人もいるらしい。
そのあたりの社内福利厚生は素晴らしく、社員思いの企業と言われているだけのことはある。

「佐伯さんはスーツ一式を10セットと伺っておりましたので、こちらにベーシックなものからデザイン性に特化したものまでいくつか取り揃えておきました」

「えっ、10セットもですか?」

「はい、10セット、と社長より伺いましたが……」

「そうですか……」

スーツは持っていない訳じゃないけど、前の企画営業部ではオフィスカジュアルだったので、数は確かに足りないと思うけど、さすがに一気に10着となると負担が大きい。
それでも社長が用意しろ、ということは買えということなのだろうから従うまでだ。

見るからにどれも上質なものばかりで、値が張るだろうなと思いつつ、いくつか手に取り、フィッティングルームの前で笑顔で私を待っている担当の方の元へ向かった。

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