【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
***


「ふう……。やっと終わった……」


スーツだけではなく、パーティ向きのドレスも数点用意されていて、髪もメイクも合わせてみましょう、なんてノリノリの担当の方に乗せられて、何着合わせたのか分からないほど袖を通しまくった。

終わり次第帰ってもよいというお言葉に甘え、そうしようと思っていたのに定時より少し早いぐらいの時間になってしまっていた。

「まあ、いつもより少し早いし……」

ロッカールームに寄って、エントランスを抜け外に出ると、空はどんよりした雲におおわれ、今にも雨が降りだしそうだ。
折り畳みの傘は持っているけれど、どうせ役に立たないほどに激しい雨になるのだろう。
それなら早く帰らなきゃ、そう思って駅の方向へ向き直り歩き出そうとした時。

「きゃっ!ご、ごめんなさ……、え……?」

どん、という衝撃が身体に走り、それが誰かにぶつかったせいだと気付いて顔を上げるとそこにいたのはーーーー。

「ごめん、大丈夫?後ろから驚かせようと思って近付いたんだけど、こっちに向かうとは思ってなくて」

「し、社長?な、何でここに……」

「何でって、君と一緒に帰ろうかと」

「え?」

多忙を極める社長がこんな時間に帰ってもいいんですか?とも思ったけれど、朝どれだけ早く来ているのかは知らないし。
そもそも社長に定時なんてないよね、という結論にたどり着く。

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