【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う


「はあ……、ちょっと、演技なのかなあと思っちゃうぐらいなんだけど……。これが素なのかなあ……」


そう言って社長は指を絡めて繋いでいた手を解放して、そのまま私の頬を指先でつうっと撫で上げる。向けられたまなざしには先程までのからかうような雰囲気はない。


「っ!あ……、あの……」

「美緒……」


じっと私を見つめる社長の目には私が映っていて、それに気付くと心拍数が急激に増えてしまい、顔に熱が集まってくるような気がする。

私なんかよりもずっと綺麗な顔立ちに、つい見とれてしまう。
話し方は気さくでこちらに緊張感を持たせはしないのに、時折向けられる強気な目と、口角を上げて笑う口元はやたらと艶めいていて、嫌でも大人の男性として意識させられる。


「ーーーー社長、セクハラです」


わずかに甘い空気が漂い始めた瞬間、それを切り裂くように藤堂さんの冷静な一言が放たれた。


「ちょっと待て、今それ言うか?というかセクハラじゃないだろ。婚約者に触って何が悪い」

「佐伯さんが怯えています」

「え、怯えてる?」


そう聞いてくる社長からはさっきまでの色めいた様子は消え、からかうような軽い感じに戻ってしまっていた。

さっきのは一体なんだったんだろう。
抗えない雰囲気というか。あんな感じで迫られたら、経験値がほぼない私は逃げられるのだろうか。
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