【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「どうぞ」

「うん、ありがとう」


鍵を開け、玄関の中に入って明かりをつけてから社長と藤堂さんへ声をかけたけど。
なぜ二人を招く羽目になっているのか、実はよくわかっていない。
送ってくれただけなら玄関でさようならなのに、寄っていくというのはただ単に中が見たいからなのか、私の疑いを晴らすためなのか。

本当なら今日も普通に出勤して普通に帰宅する予定だったのに、朝、辞令が出てから私を取り巻く環境が劇的に変わってしまった。

そして今に至る訳だけど、とにかく社長が私の家にいる景色が違和感ありすぎてついつい目が向いてしまう。


「あの、何かお出ししましょうか」

「あ、気を遣わなくてもいいよ?すぐ帰るつもりだから」

「そうなんですか……?」


すぐに帰るから、と言う社長の返事を聞いてますます今の状況が飲み込めなくなってくる。


「あの、それじゃ何か用事があるから家に寄ったんですか……?」

「ん?いや、君の用意が必要だろうなと思って」

「用意……って何の用意ですか?」

「何って、お泊まりの用意とか?」

「……え……?」

「君には俺の家に来てもらおうと思ってさ」


本当に今日はこの人が発する言葉に振り回されてばかりだ。
婚約者と言われたことも驚いたけど、今のはその上を行くほど意味が分からない。
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