【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「えっ!あれって藤堂さんだよね」

「秘書室長自ら参上ってことは佐伯さんの異動ってホントなのか」

「ヤバい!藤堂さんカッコよすぎて辛いんだけど」


私の後ろにいる皆が色めき立ち、ボソボソと小声で話す内容から察するに、オフィスの入り口にいつの間にか立っていたこの人は私の異動先である秘書室の室長らしい。

というか、この人そのものの存在は私も見かけたことがあるので知っていたけれど、彼が秘書室長だとは思いもしなかった。

見た目は30台前半、切れ長の目に清潔感は保ちながらも程よく整えられた髪、シンプルでありながらも上質な素材を使用していると思われるスーツはいつ見てもシワひとつなく、シャツとネクタイの色味は万人受けするようなコーディネートになっている。

所謂ツッコミどころのない完璧主義者、とでも評するべき存在だな、と思ってはいたけれどその若さから室長の地位にあるとまでは想像しきれなかったのだ。


「佐伯美緒さん……ですね?突然の異動で申し訳ありません。事情をご説明しなければ、と思い伺ったのですが、一歩遅かったようですね」

「あ……、いえ、ちょうど今、課長から話を伺っていたところでしたので……」

「山村課長には私が直接説明しますとお伝えしていたつもりでしたが?」

「え?あ、そうでしたか……、あっ、メールですね……。申し訳ありません、こちらの辞令に気をとられてしまい気付かず……」

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