【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
剣崎さんについて店の外へ出ると、涼しい風が頬を掠めて気持ちがいい。


「だいぶ涼しくなってきたよね。10月なのにいつまで夏だよってぐらい暑くてさ」

「……そうですね……」


お店の入り口の横に、通りからは目立たないわずかなスペースがあり、剣崎さんはそこへ私を連れて来てくれた。
風に当たって酔いが覚めるかと思ったのに、覚めるどころか今度は眠気が増してくる。


「ごめんね、具合悪い?」

「いえ……大丈夫です。……私の方こそごめんなさい。ご迷惑をおかけして……」

「俺はいいよ。むしろこの状況が嬉しいから」

「そうなんですか……?」

「うん。君とゆっくり話したかったんだけど……、ちょっと難しいかな」

「ごめんなさい……」


何だか申し訳ない。
どこまで本気かわからないけど、こんな素敵な人に好きなタイプと言われたら単純に嬉しい。
もちろん場を盛り上げるために言ったとか、私が浮いてて可哀想とか、色々理由はあるだろうけど。


「ねえ佐伯さん、今度は二人で会わない?」

「え?」

「今日はもう帰った方がいいと思うんだ。だけどまだ君と話してみたくて。よかったら連絡先教えてもらえないかな」


突然の申し出に、経験が無さすぎてうろたえる。
こういう場合はなんと答えたらいいんだろう。
男の人と付き合ったことも合コンに行ったことも、連絡先を聞かれたこともないのだから、本気でどう対応していいかわからない。

ただ、連絡先なら交換してもいいものなんだろうか。
阿川さんのお友達なんだし、悪い人ではないと思うし。
だけど一応婚約してるし教えないのが正解なのかなあと、ぼーっとする頭で考える。
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