【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「あの、私……っ、きゃ……!」
「危ない……!」
足元がおぼつかなくてよろめき、転ぶ、そう思って目をつぶったのに。
衝撃は一向に訪れず、何か温かいものに包まれている感覚が芽生える。
「……大丈夫?」
「だ、大丈夫です……ごめんなさい……!」
温かいと感じたのは剣崎さんの体温。
あろうことか私は剣崎さんの腕でしっかりと支えられ、すっかり身を預けた状態になっているらしい。
彼の腕の中に収まるこの状況に心臓がバクバクしていて息が苦しい。
男の人に触れられたのは、社長に肩を抱かれた時が初めてだからこれが2度目だ。
社長に肩を抱かれた時は細身なのに筋肉質な体つきにひどくときめいたけど、今は早く離れなくちゃと気ばかり焦っている。
「あの、もう大丈夫なので……」
「……君って、すごく優しい香りがするね……」
「そ、そんなことは……、そ、それよりもう離して……」
私を抱く力が強く、力の入らない足では突き放すことも出来ず、もがいてみてもびくともしなくて。
「け、剣崎さん、お願い……離して……?」
「っ……、君って……」
いつまでもこんな状態ではいられない。
そう思って剣崎さんに抱かれたまま彼を見上げて懇願すると、なぜか私を見て驚きの表情を浮かべていて。
もしかしたら引くほど化粧崩れがひどいのかとも思ったけど、しばらくの間なにも言われず見つめあったままなので、さすがに居心地が悪いと感じ始めた時。
「美緒!」
低音の、艶っぽい声が聞こえたかと思った瞬間、誰かの手が剣崎さんの肩を掴み、彼が後ろにのけ反ったので私は解放されたけど。
すぐにまた別のぬくもりに、今度はぎゅっと抱きしめられてしまっていた。
「美緒?大丈夫か?」
そう言って心配そうな声で腕の中の私の様子を窺うのは、ここにいるはずのない社長だった。