【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
その姿が目に入った途端、ついさっきまで眩い光を放っているかのように神々しく見えたはずの藤堂さんが一気に霞んでしまった。

艶のある黒髪に目尻がスッと伸びた切れ長の瞳は涼しげな印象を与えるのに、口の端を緩く上げて笑みを携える表情からは優しさが垣間見えてドキッとする。
スラリと背は高く、シックな色合いのスーツがよく似合っているけれど、新社長は私の記憶では年齢は30に届いたばかりぐらいだった気がする。


「ふ……、そんなに見つめられると穴が開きそうだ」

「え……?あっ、ご、ごめんなさい、私……」

「別に構わないよ。俺は君に見つめられるのは嫌じゃないらしい」

「え?」

「俺はね、相性の悪い女性に見つめられると蕁麻疹が出るんだ」

「……じ、じんましん……?」


それって冗談?という問いが頭に浮かんだけれど、口にはできなかった。
けれどどうやら社長はそんな反応に気付いたようで。


「本当なんだよ。女性に興味を持たれるのは嬉しいんだけど、誰でもいいって訳じゃない。それが過剰に出てしまうんだ」

「は……、はあ……」

「社長、佐伯様がお困りですよ」

「でも説明しておかないと誤解を生むだろ?現に俺は今彼女に変な奴だなって思われてる」

「お、思ってませんよ……?」

「ははっ、そんな全力で作り笑いされてもなあ。顔に出てるよ?うちの社長って変なんだ、ってさ」


そう言って社長は私に応接セットのソファーに来るよう手招きし、私に先に座らせてから腰を落とした。
藤堂さんはそこが定位置なのか、いつの間にか社長の後ろにそっと控えていた。
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