【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
***

私は15時には帰って来られたけど、暁斗さんは21時を過ぎた今でも帰って来ていない。

会社からここまでは車で10分ほどの距離だけど、仕事自体が終わらないのかもしれない。
この天候のせいで不測の事態が起こったのかも。


「……すごい風……」


私はマンションというものに住んだことがなく、地上から遠く離れた場所では天候の影響をどれぐらい受けるのか全く知らなかった。

地に足がついていないような気がして怖いというのはもとより、今みたいな大荒れの天候の時には窓の外が真っ暗闇で、ただただ風と雨の音が轟いてきて足元がすくむ。

普段は見晴らしのよい景色が素敵で、見下ろす夜景が綺麗だけれどこんな日はいいところが一つもない気がする。


「お風呂入っちゃお……」


暁斗さんも早めに帰ってくるかと思っていたので、ご飯をどうするか悩んでいてお風呂に入るのが遅くなってしまった。

ちょうどお風呂上がりのところへ、帰ってきた暁斗さんに鉢合わせると恥ずかしいし、絶対何かしらからかわれるので大急ぎでお風呂場へ向かう。

換気口から聞こえる風の音なのか、カタカタと不気味な小さい音が聞こえてきてぞわっと背筋が寒くなる。

とにかく早く上がろう、それだけを思って湯船にはほんの少し浸かっただけで、バタバタと身体を洗い、本当にカラスの行水といい勝負なぐらいだな、と思うほど早く上がることができた。


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