【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
洗面台の前で髪を乾かしていると、玄関の方で音がしたような気がしてドキッとする。
風の音かもしれないけど、暁斗さんが帰ってきたならしっかり身支度して出なきゃと思い、念入りにブローしていると。
「えっ……、停電……?」
カチッカチッと音がして照明が不安定になったと思った瞬間、目の前が真っ暗になり、手にしていたドライヤーは動力を失い止まってしまった。
目は開けているのに突然襲われた真っ暗な世界。
何も見えない。自分の手さえも目が慣れていないせいか輪郭すら描けない。
「や、やだ……!出なきゃ……」
心拍数が急上昇しているせいか、耳の奥からはドクンドクンと鼓膜に伝わる低音が鳴り響く。
手探りでドアの方へ向かい、開けようとしても開かなくてますます焦り、手には嫌な汗が浮かび始める。
「なんで?どうして開かないの……!」
鍵をしていたから解除をしたのに、なぜかガタガタいうばかりでドアは一向に開かない。
怖い。
暗い所は怖い。
こんなところに居たくない。
誰か助けて。
早く、息が、もう苦しい。
「もういや!出して!ここから出たい……!助けて……!」
「ーーーー美緒!大丈夫か!」
「あ、暁斗さん……!助けて……!」
ドアの向こうから暁斗さんの声が聞こえ、開けようとしてくれているのかガタガタと激しくドアが揺れる。