【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
6章 恋に落ちる瞬間

誰かを意識するって、こういう感覚なのかな。
そもそも私は誰かに恋をしたことがないから、男の人へ特別な感情を持つ過程がわからない。
誰かを好きになる、それがどういうものかを知らないのだ。

もちろん映画や小説で恋をして結ばれるストーリーにドキドキしたり、きゅうっと胸が切なくなったという経験はあるけど、実体験はない。

だから最初に暁斗さんを見た時も、素敵な人、と思うだけだった。肩を抱かれたり腕枕をされたりと、触れ合ってドキドキするけどそれだけ。

でも最近は自分が彼の眼中にないことが気になったり、今までどんな人と付き合ってきたんだろうと、思うようになった。

これが『恋』というものなのか、そこからどう発展するのかは未知の世界だ。

けれど今、私は暁斗さんを眺めているだけなのに胸の奥がなんだか騒がしく、落ち着こうとしているのにずーっとドキドキしたまま。

これってもしかしてーーーー


「美緒?聞いてた?」

「え……、あっ、ご、ごめんなさい。聞いてなかったです……すみません……」


今は出勤途中の車内。
暁斗さんは眼鏡をして新聞を読みながら今日の予定を藤堂さんから聞いていた。

会社に着いてからコンタクトに切り替えることが多いので、朝はいつもこの光景なんだけど、私には眼鏡の暁斗さんが物凄く素敵に見えるのでつい見とれてしまっていたのだ。
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