【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「君はどうしてうちへーーーー、Agresを選んだの?」

「え……」

どうして選んだと聞かれ、入社の動機のことかと思ったけれど、入社して半年も経った今ぶつけられる質問ではないように思えて、質問の真意がわからずなんと答えたらよいのか迷う。

Agresは大手IT企業の一つで、通信サービスのみならず、今ではグループ会社も多岐に渡り様々な分野へ進出を果たす、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう、国内外にその名が知れ渡る有名企業だ。
けれど私は有名だからこの会社を受けたのではなく、社員の声が通りやすい自由な社風に憧れたからだ。
ここなら素のままの私でいてもいいんじゃないか、そう思って。

「Agresは社員を大切に育てることで有名ですしーー」

「いや、俺が聞きたいのはそれじゃないよ。なぜうちへ来たの?ーーーーなぜ、自分の父親の会社を選ばなかったの、と聞いたんだ」

「な、なんで……」

「君は佐伯コーポレーションの前社長のご令嬢だ。現社長とも無関係ではないだろう?」

「……っ」

「国内最大手のアパレルメーカーのご令嬢が、なぜ普通にうちの会社を選び、一般社員として入社したのか。不思議に思ってもいいよね」

思いがけない急展開に全く頭がついて来ない。
それもそのはず、おバカな私は佐伯の家との繋がりが知られるはずがないと考えていたから。
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