初恋のうたを、キミにあげる。
両親のことを思い出して、心がぎゅっと押しつぶされそうだったのに、森井くんが優しく声をかけてくれるだけで、気持ちが浮上していく。
名前のわからない気持ちがふわふわと浮いて、私の心を満たしてくれる。
この感覚はいったいなんだろう。
「上手く話そうって考えなくていいと思う」
「え……」
「考えるから余計に話せなくなって空回るんじゃねーの」
森井くんの言う通りだ。
上手く話そう。苛つかせないようにしなくちゃって思うと、焦って余計に言葉が出てこなくなってしまう。
もともと緊張に弱いのに、自分で自分を強張らせているのかもしれない。
「俺とも話せるようになったし、少しずつ変わってきてるよ」
「……それはきっと」
立ち止まって、森井くんの背中をじっと見つめる。
振り返った森井くんに柔らかな月光が降り注いでいて、神秘的ですごく綺麗。
言葉が夜風に乗って溢れ出す。
「森井くんと出会えたから」